1.8月5日に愛知地方最低賃金審議会が愛知県最低賃金を1,077 円に改定すべきとした答申に対し、多数の異議申出があったにも関わらず、同審議会は8月21 日、「答申は妥当」と結論づけた。8月5日の愛労連事務局長談話でも指摘したとおり、歴史的な物価高騰下における労働者の生活実態をふまえない判断であり極めて遺憾である。
2.8月21 日の審議会では、各労働組合や団体から提出された54 件の異議申出書(以下、異議書)が全員に配付され約40 分事務局が説明した。昨年の47 件を上回り過去最高の異議書件数になったのは、物価高が続いている中で1,077 円では生活が改善しないという声が高まっているからであり、職場実態をふまえた具体的な内容が綴られたことも特徴である。
愛労連が提出した異議は、①最低賃金額1,077 円では低額すぎること、②労働者委員が主張した1,100 円、愛労連が提出した1万人を超える署名、47 通に及んだ1,500 円を求める意見書について、説明が20 数分行われただけで、なぜ1,077 円とするのか、その根拠とともに審議もまったく不十分であること。しかも公開で行われた専門部会の審議時間をはるかに上回る、5時間以上の非公開(議事録なし)の協議で事実上「額」が決まったこと、③私たちは中小企業への財政支援を政府へ要望するよう要請(署名など)してきたが現時点で具体化されていないこと、④最賃法第9条にもある「労働者の生計費」「賃金」「事業の支払い能力」のうち、労働者の生計費にかかる資料がまったく不十分であること、⑤関東圏への人口流出議論で使用者委員の主張が看過できないこと、⑥最賃法25 条に基づく労働者の意見陳述が行われなかったことだった。
3.提出された異議書を受け、労働者代表委員は「異議書の内容は、私たちが審議会で主張してきた方向性と同じもの。50 円の引き上げは過去最高だが、私たちの主張が届かなかったのは残念」と表明し、使用者代表委員は「継続して賃上げが出来る環境整備の支援が必要という多くの異議書の意見は我々と同意見」とした。中小企業支援を含めた異議書の内容は的を射たものであり、愛労連の継続したとりくみが審議に浸透している。
しかし、審議会会長が「審議会に提出された資料や3要素も十分議論、異議書もふまえて議論を尽くした。見直す必要は無いと考える。答申どおり決定したい」とまとめたことは、愛労連の異議書にも述べたように、公開された議論は極めて限定的であり、最も重視されるべき生計費の資料は適正を欠くものであったことなどから、空虚なまとめであると言わざるを得ない。
全国では、愛媛+9円、島根+8円など目安額の50 円を上回る決定が進んでいることをどう受け止めるのだろうか。
4.1,077 円の効力は10 月1日に発生する。愛知労働局の資料によると、時給1,076 円以下の労働者は24.6%、女性では34.7%、とりわけ若年層と高齢者は比率が高い。法が履行されるとともに、非正規に留まらず改定額以上の上積みをめざす労働組合のたたかいが重要になる。
愛労連は10 月1 日、改定額の周知とともに「いますぐ1,500 円、めざせ2,000 円」の宣伝を旺盛に展開する。合わせて、この秋から「全国一律最低賃金」のキャンペーンや来年の最賃引き上げ運動に奮闘することを表明するものである。
以 上
2024 年8 月22 日
愛労連事務局長 竹内 創
(愛知県労働組合総連合)