【談話】愛知の最賃41円引き上げは生活を改善する水準ではない 異議審での大幅引き上げに向けた再検討を求める

 愛知地方最低賃金審議会は8月4日、2023年度の最低賃金について、中央最低賃金審議会が示した目安どおり41円引き上げる答申を愛知労働局長に対して行った。時間額は1027円となる。審議会では、物価高を踏まえて労働者代表、使用者代表の意見が表明されたと報告され、全会一致で41円引き上げる答申が決定された。しかし、これでは物価高を後追いするだけで、最低賃金近傍で働く労働者の生活改善にも、経済の活性化にもつながらないと言わざるを得ない。
 愛労連をはじめ全国28都道府県のローカルセンターと全労連が約4万7000人の協力を得て実施してきた全国最低生計費試算調査結果によれば、「8時間労働で人間らしく暮らす」には、全国どこでも月額24万円(時給1500円)以上必要であることを明らかにしてきた。さらに物価高騰が低所得者ほど重荷になっていることを踏まえれば、今回の引上げ額ではまったく足らない。マスコミも、非正規雇用労働者の「目安どおりの引き上げでは足しにはならない」という生の声を紹介しながら、目安を大きく上回る引き上げが必要だと指摘してきた。今後、労働局長が答申に対する異議の申し出を募るが、多数寄せられるであろう大幅引き上げの声をしっかり受け止めて再検討することを求める。

 私たちは、今回の審議にあたって、最低賃金改定の影響を直接受ける非正規雇用労働者が審議会に一人もいないことから、引上げ額の実質的な審議を行う専門部会では当事者を交えた議論がされるよう、労働者側委員に二人の非正規雇用労働者を推薦してきた。しかし、労働局長がこれを排除したため、審議会での意見陳述実施を求めたがそれも排除された。当事者の生の声も聞かずに審議がおこなわれ、答申額が決定されたことは極めて遺憾であり抗議する。異議の申し出を受けておこなわれる審議の場で、当事者の意見陳述が行われるよう改めて求める。

 今回の審議では、中央最低賃金審議会の報告を受け、引上げ額の実質的な審議を行う専門部会の一部が公開された。私たちは、これまでも開かれた場でこそ公労使委員それぞれが責任を持った議論ができるし世の流れであるとその公開を求めてきた。しかし、公開された場での議論は、労使双方が求める引上げ額さえも示されない極めて形式的なものであった。これまでもブラックボックスとの批判がされてきたが、公労および公使の二者協議を逆手に取った審議は闇の中と言わざるを得ない。これまで非公開とされてきた専門部会の議事録(※)を行政文書開示請求し分析したが、昨年の公労使三者が揃う場での審議は引上げ額の具体的な提示やその根拠が示され、今年よりは真摯な議論がされていた。専門部会を公開する意義は何だったのか。すべての専門部会委員に問うものである。

愛労連は引き続き、物価高騰から生活を改善し、誰もが8時間働けば人間らしく暮らせる最賃1500円と全国一律最低賃金制度の実現、中小企業支援策の抜本的強化と公正取引の実現のためにいっそう奮闘することを表明する。

2023年8月4日

愛労連事務局長 竹内創

※愛知県最低賃金専門部会の議事録 http://www.airoren.jp/2023/04/8737.html

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