2021年7月7日、愛労連最低賃金・公契約対策委員会は、愛知県最低賃金(2020年10月1日時点で時間給927円)を1,500円に引き上げた場合の地域経済効果(試算)を公表した。以下、試算結果の概要と本文および附属資料を掲載する。
1.試算の目的 愛知県最低賃金を1,500円に引き上げた場合の地域経済効果(家計消費支出増加額、生産誘発額、付加価値誘発額、生産増加に伴う就業者・雇用者増、税収増)を試算し、最低賃金の引き上げの有力な根拠の一つにする。
2.資料と方法
(1)試算に用いた主な資料
愛知県『2015年愛知県産業連関表』(2020年12月公表・2021年3月修正版公表)、厚生労働省『賃金構造基本統計調査』の特別集計(2019年、愛知県分)、厚生労働省『毎月勤労統計調査地方調査結果』(2019年、愛知県分)、総務省『就業構造基本調査』(2017年、愛知県分)、総務省『全国家計構造調査』(2019年、愛知県分)、「国民所得に対する租税負担率の国際比較」(財務省総合政策研究所『財政金融統計月報』2020年5月)など
(2)方法
①『賃金構造基本統計調査』の特別集計などから、時給1,500円未満の愛知県内労働者数を推計(附属資料 第1表の1・2)
②それら労働者の時給を1,500円に引き上げた場合の総賃金増加額を計算(第1表の1・2)
③『全国家計構造調査』により、総賃金増加額のうち、税や社会保険料などを除いた家計消費支出の増加額を推計(第2表の1)
④愛知県産業連関表により、生産誘発額(県内生産増加額)、付加価値誘発額(県内付加価値増加額)、就業者数および雇用者数の増加を計算(第3表の1~第4表の2)
⑤「国民所得に対する租税負担率の国際比較」より、付加価値に対する国税と地方税の割合を求め、国と地方(愛知県地域)の税収増を推計(第5表)
3.試算結果の概要
(1)時給1,500円未満の愛知県内労働者数:約188万人(愛知県内労働者の約50.2%)
(2)上記労働者の時給を1,500円に引き上げた場合の総賃金増加額:約1兆1,224億円
*企業が負担する法定福利費の増加分:約1,583億円、うち中小企業(従業者299人以下)の増加分:約712億円
(3)総賃金増加額から税や社会保険料などを除いた家計消費支出の増加額:約9,509億円、うち県内消費支出は約5,917億円(年収250万~300万円未満の勤労者世帯で計算)
*年収300万円以上の勤労者世帯で計算した場合と比べ、約2,787億円多い
(4)生産および付加価値誘発額、就業者数および雇用者数の増加
①生産誘発額(県内生産増加額):約8,505億円
*上位10部門(不動産部門を除く):商業(卸売・小売業)、対個人サービス、金融・保険、対事業所サービス、情報通信、運輸・郵便、医療・福祉、飲食料品製造、教育・研究、自動車製造
②付加価値誘発額(県内付加価値増加額):約5,413億円(付加価値は、生産活動によって新たに生み出された価値で、雇用者所得や営業余剰などからなる)
③就業者数(個人業者・家族従業者・雇用者数)の増加:約45,018人
④雇用者数(有給役員・常用雇用者・臨時・日雇雇用者数)の増加:約41,394人
*上位10部門:対個人サービス、商業、対事業所サービス、医療・福祉、金融・保険、運輸・郵便、不動産、情報通信、教育・研究、飲食料品製造
※部門別に生産効果と雇用効果を見れば、最低賃金を引き上げることにより、地域密着型の産業の生産と雇用が相対的に多く増加することを示しており、その主な担い手は中小企業と思われる
(5)国と地方(愛知県地域)の税収増:約1,018億円(国税約623億円、地方税約395億円)
*中小企業の法定福利費増加分(約712億円)への財政的支援は十分可能
以上
本文:愛知県最低賃金引き上げの地域経済効果試算(docファイル)
附属資料(xlsファイル)