岸田政権による安倍元首相の「国葬」強行に反対する

 岸田首相は、参院選後に安倍元首相の「国葬」を表明し、賛否をめぐって世論が割れているにもかかわらず、根拠法も国会審議もないまま閣議決定のみで強行しようとしています。岸田政権が、「国葬」を9月27日に実施することを7月22日に閣議決定して以降、全国各地で反対の世論が巻き起こっています。マスコミ各社の世論調査では、読売新聞(8月5~7日・評価する49%、評価しない46%)以外はいずれも反対が上回り、時間の経過とともに反対世論が高まり、直近の毎日新聞(8月20~21日・賛成30%、反対53%)では反対が圧倒しています。
 これを受け、岸田首相は8月31日の記者会見で、「国葬」の当日、地方自治体や学校への対応は求めないとしましたが、各府省庁には弔旗の掲揚や葬儀中の黙とうを求める考えを示しました。7月12日に行われた安倍元首相の葬儀の際には、国の要請がなくても各地の自治体や教育委員会が現場へ弔旗の掲揚を要請しました。「国葬」が実施されれば、同様のことがさらに多くの地方自治体や教育現場で行われることが危惧されます。弔意は個人の心情に基づいて自由であり、政府や自治体が国民に弔意を強制することは、憲法14条「法の下の平等」、19条「思想及び良心の自由」に反する基本的人権の侵害であり、断固抗議し「国葬」の中止・撤回を求めます。

 岸田首相は、「憲政史上最長の8年8か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力を持って総理大臣の重責」を担ったとし、「日米関係を基軸とした外交の展開など様々な分野で実績を残し、その功績は素晴らしいものがある」と安倍元首相を礼賛しましたが、仮に優れた功績があろうと「国葬」を行う法的根拠はありません。
 安倍政権は、新自由主義的経済政策によって働くルールの破壊や大企業・富裕層のためのアベノミクスを推進し、消費税増税と医療や社会保障の削減などで国民生活と地方経済を壊してきました。同時に、歴代自民党政権の見解を大転換して「集団的自衛権行使を容認」する閣議決定や安保法制の強行により、「戦争する国づくり」を進めてきました。森友学園や加計学園問題、桜を見る会などの国政の私物化、国会で118回にわたる虚偽答弁など、安倍政治に対する国民の批判は尽きません。さらには、旧統一教会との深い関わりが明白になった今、「国葬」などもってのほかです。
 また、岸田政権が「安倍元首相の意志を継ぐ」ために「国葬」を利用し、憲法9条改憲や敵基地攻撃能力の保有、くらしを破壊し戦争するための大軍拡を推進することは絶対に許されません。

 新型コロナ感染第7波の爆発的な拡大とともに急激な物価高騰がくらしと営業をおびやかしているもとで、政府がやるべきことは「国葬」ではなく、医療・公衆衛生体制の確保と拡充によって命を守ることであり、消費税減税や大幅賃上げによってくらしと経済を底支えすることです。改めて「国葬」中止を強く求めるとともに、憲法をいかし、労働者・国民のいのちと暮らしを守る政治を実現するために全力をあげることを決議します。

2022年9月3日

愛労連2023年度第1回評議員会

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