大村知事は労働者に頼りにされる労働委員会を取り戻すための責任を果たせ
愛知県知事 大村秀章 殿
愛知県労働組合総連合
議長 西尾美沙子
名古屋ふれあいユニオン
運営委員長 鶴丸周一郎
東海労働弁護団
団長 後藤潤一郎
11月30日、愛知県は第46期愛知県労働委員会委員の名簿を発表した。
今回の選任にあたり、愛労連と中立労組の名古屋ふれあいユニオン、東海労働弁護団は、知事に対し個人署名7885筆、団体署名805団体分を提出し、労働者から頼りにされる労働委員会を取り戻すための選任を求めてきた。その内容は、①公益委員に専門家である労働法学者や労働法に精通した弁護士を入れること、②公労使すべての委員で女性を4割以上(各3人以上)にすること、③労働者委員について公平中立な選任をし非連合の委員も任命すること、④労働者実態に合わせた労働者委員の構成となるよう非正規労働者の委員と医療・福祉分野の委員を任命することであった。しかし、今回の任命にあたって、要請項目のすべてが受け入れられなかった。上記要請事項は、いずれも憲法と労働組合法が予定する労働委員会としての役割を発揮するために必要最小限の要請であり、これらの要請を一顧だにせず、従前通りの任命を繰り返したことは、委員の任命権者としてその見識と公正さを疑われるものといわざるを得ない。
この4つの要求は、①タクシー業界最大手の第一交通による組合つぶし事件をはじめ、いくつかの事件で愛労委判断を最高裁や中労委が覆すなど、明らかに誤った判断を愛労委がしていること、②公益委員自身から知事の選任に対する皮肉交じりのコメントがされるなどの異常な事態があること、③数々の不当労働行為とたたかってきた労働組合や弁護士の中では、愛労委を頼りできずに裁判に訴えざるを得ないことが増えており、県民の信頼を損なっていることから状況を改善すべく要請した事項である。
労働者委員については、今回も7人の労働者委員全員が「連合」独占で、「連合」に所属しない愛労連傘下の労働組合や中立労働組合を排除した。労働委員会が不当労働行為の救済機関として適切に役割を果たすためには、現実の労働現場で潮流間の対立があることに鑑みれば、労働者の代表的側面を有する労働者委員について「異なる潮流」の片方だけを排除することは、そこに団結する労働者を切り捨てることにほかならない。
1999年5月の名古屋地裁判決では「労働組合運動において運動方針を異とする潮流・系統が存在する以上、労働者委員の構成においては多様性を有することが望ましい」「今後はより多くの労働者に支持される合理的選択を」と是正を求めている。この判決を受けて、全国で「連合」独占が改められ、現在では中央労働委員会と11都道府県(北海道・宮城・長野・東京・埼玉・千葉・神奈川・京都・大阪・和歌山・高知)で非連合の委員が選任されている。これは、組織の大小にとらわれることなく、幅広い系統から選任するという労働組合法の趣旨にのっとった知事としての当然の判断である。名古屋地裁判決を直接受けた愛知県知事が旧態依然たる不公正な任命をまたもや繰り返したことは極めて遺憾であり、強く抗議する。
今回の選任結果は、いま救済を求めている労働者・労働組合にとっては不安でしかないし、新たな申し立てを躊躇する事態も生まれかねない。
「知事は救済を求める労働者の声が聞こえないのか」。このような不当任命は公正であるべき行政を大きくゆがめ、労働委員会の機能をそこなう自殺行為である。私達はこの任命に強く抗議し、撤回を求めるものである。
以上