【談話】愛知地方最低賃金審議会の最低賃金「1円引き上げ」の答申について

愛知県労働組合総連合(愛労連)
事務局長代行 竹内創

 愛知地方最低賃金審議会は8月5日、愛知労働局長に対して最低賃金額を927円(1円引き上げ)とする改正決定(答申)を愛知労働局長に提出した。

 愛労連は、①昨年12月より最低生計費試算調査をふまえ1,500円の要求を掲げ、②2月の最賃生活体験のとりくみ、③「コロナ禍だからこそ 最賃大幅引き上げ」のアクションを名駅・金山・栄・三の丸で実施、④そして、昨年を大きく上まわる11,000筆を超える署名を提出してきた。今回の答申は、労働者代表委員の奮闘により「凍結」は逃れたものの、到底納得できるものではない。

 いま、コロナ禍のもとで中小企業や小規模事業者、飲食業、小売業、宿泊業、製造業は経営が大変厳しい状況にある。医療や介護をはじめとするエッセンシャル・ワーカーも同様である。今後も消費が冷え込めば、さらに経営が困難になることが予想される。最低賃金の抑制は、経済に対する負の効果しかない。消費を向上させるためには、賃金の底上げが最も効果的である。

 生活不安が高まる中で「コロナ禍だからこそ、大幅な賃上げが必要」だと、多くの労働者・国民が賛同するはずである。わずか1円の引き上げでは、最低賃金法が定める「賃金が低廉な労働者の生活の安定を図り、経済の健全な発展に寄与する」目的を果たすとは到底思えない。生活の先行き不安をさらに増大させ、経済を好転させるにはあまりに非力な額である。

 とりわけ、最低賃金の改定が直接影響する非正規労働者の生活は深刻である。私たちは審議に対して何度も、生の声を聞いて欲しいと要望したが、実現しなかったことは遺憾である。感染拡大を防ぐため活躍しているエッセンシャル・ワークの現場を支えている多くは、低賃金・不安定雇用の非正規雇用労働者である。スーパーなど小売業で働く労働者の22.2%・約130万人が最低賃金×1.15未満の低賃金で働いている。これらの人々の暮らしと日本経済を守るためには最低賃金を大幅に引き上げることが必要である。

 927円×8時間=7,416円×22日(就業日数)163,152円。ここから厚生年金料・健康保険料・雇用保険料・所得税・住民税の合計約30,000円を引くと、約133,000円。一人暮らしならここから家賃を差し引いて生活しなければならない。人間らしい生活ができる額ではない。私たちが2月に行った最低賃金生活体験の結果を審議会に提出し、体験者の意見陳述を求める署名を11,000筆以上も集め要望したが、残念ながら受け入れられなかった。「意見書」も提出したが、最低賃金法施行規則第11条第2項の規定は、意見書だけでなく、意見陳述等を実施することを、審議会(専門部会)に「義務づけている」が受け入れられなかったのは極めて残念である。今後、審議会が定めに忠実な判断をし、多様な意見を聞く真摯な姿勢を求めるものである。

 最低賃金の引き上げには、政府による中小企業支援策の抜本的強化が欠かせない。全労連は3月、日本経済が不可逆的な経済破壊を避け、早く回復するには、労働者の雇用・賃金・権利を守るとともに中小企業支援策が欠かせないとして、最低賃金との関連を中心とした「中小企業政策」の中間報告をまとめた。中小企業経営者とともに政府に対して政策の抜本的転換を求めている。

いま求められるのは、優越的地位の濫用などを明記する独占禁止法の抜本的改定、下請二法の強化、公正取引委員会の機能と体制の強化などにより、適正価格による公正取引の確立であり、それを保障する法整備と行政力の拡充である。さらに、諸外国並みの大幅な中小企業支援策の拡充である。

そして、この危機的状況下に求められる施策は、自粛などによって被った損失と固定経費を、迅速に確実に事業主と労働者に届けることであり、コロナ禍が収束するまで繰り返し実施することである。それを補完するために、利用しやすい、中小企業の願いに寄り添った行政の力強い支援策の拡充は不可欠である。

 愛労連は、8月21日(金)に予定されている審議会に向けて、異議申立書の提出を加盟組合に呼びかけるとともに、8月18日(火)8時~8時45分に三の丸で実施する宣伝行動をはじめ最賃引き上げをめざして全力を上げるものである。

以上

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