トヨタ自動車株式会社
代表取締役社長 豊田章男 様
愛知県労働組合総連合
議 長 知崎 広二
貴社におかれましては、自動車産業の健全な発展に尽力されていることと拝察し敬意を表します。
さて、新型コロナウイルスの感染拡大が労働者の雇用を直撃しています。政府の雇用統計はどれも急激に悪化しています。
この間、愛労連は常設の電話労働相談や3度にわたる全国いっせい相談会、街頭でのアンケート活動などにとりくんできましたが、収入低下や雇用危機に直面し生活に困窮する労働者・県民から深刻な相談が寄せられています。
もっとも多い相談は、「休業手当が支払われない」というもので、その多くが非正規雇用労働者から寄せられたものでした。5月下旬からは、派遣切りや解雇・雇止めの相談が増え、時間の経過とともに事態は深刻化しています。正規雇用労働者に比べて、所得が低く不安定雇用の非正規労働者ほど窮地に立たされています。
私たちは、寄せられた相談の解決にあたると同時に、愛知労働局に労働基準法違反の是正と雇用調整助成金などを活用して雇用が守られるよう事業者に働きかけることを要請し、国にも労働者のくらしを支えられる休業補償とするために助成金の引き上げ、事業者が制度を利用しやすくすること、スピーディーな給付などを要望し、第2次補正予算でも拡充が図られました。
こうしたもとでいま大切なことは、事業者が雇用調整助成金などの制度を最大限活用し、労働者の雇用を守り、景気のさらなる悪化をくい止め未曾有のコロナショックを乗り越えることです。しかし、私たちのもとには、トヨタ車づくりに携わる労働者からの雇止めや派遣切りの相談が相次いでいます。
豊田社長は、2020年3月期の決算説明会で、「先が見通せないというと、雇用について一律カットとかをいい出す。工場をクローズして働いている人に辞めてくださいという。トヨタは、絶対にそういう会社になりたくない」と発言されました。「コロナ危機は、リーマン・ショックよりもインパクトがはるかに大きい」とされるもとで、トヨタ自動車が労働者を見捨てぬ覚悟を表明されたことに大変勇気づけられました。また、「日本の自動車産業の技術を継承し、自動車産業を支え、日本の経済を復興していくには、サプライチェーンを維持する必要がある」とし、株主総会では「トヨタは確実に強くなったと思います。そして、その強さを自分以外の誰かのために使いたいと思っております」とも発言されました。
今こそ内部留保や利益の一部を活用し、ネジ1本に至るまでトヨタ車づくりに携わるすべての労働者の雇用とくらしが守られるよう、関係するすべての下請企業、派遣企業にいたるまで働きかけと支援・援助を行ってください。
トヨタ自動車が、国内リーディングカンパニーとしての立場はもとより世界のトヨタとしての積極的な役割を果たされるよう要請します。
記
(1)休業手当の不払いは労働基準法違反です。すべての下請企業や受け入れ派遣企業に対して支払うよう呼びかけてください。とりわけ、雇用調整助成金は大幅に改善されており、休業手当10割の支払いを呼びかけてください。
(2)これ以上、コロナショックに乗じた派遣切りや解雇・雇止めが行われぬよう、すべての下請け企業・受け入れ派遣企業に対し、雇用調整助成金などを活用し雇用を守るよう呼びかけてください。内部留保や利益の一部を活用し、雇用を守る企業の励みになる支援・援助を行ってください。
以上