本年10月25日、愛知県労働委員会は、第一交通労働組合が申し立てていた不当労働行為救済申立を全部棄却した。愛労委の決定は、不当労働行為の救済機関としての役割を放棄したものとして厳しく批判されなければならない。
今回の愛労委決定の特徴は、組合が申し立てた不当労働行為の各事実を外形的事実としては認めながら、組合側の主張と会社側の主張を並列し、不当労働行為の疎明がないものとして殆どの申立を退けている点にある。
不当労働行為の救済申立に対して、使用者側がこれを否定し、争うのは当たり前であり、使用者が争うから不当労働行為を認められないと判断するのであれば、不当労働行為の成立が認められる事案は存在しないことになる。準司法機関として審査判定するのであれば、対立する証拠を検討して、何故、一方の証拠が信用できないかを理由付けなければ、判定の結果についての信頼性は得られない。今回の愛労委決定には、労働組合側の証拠が信用できないと判断した根拠が全く示されていない。特に、会社側の脱退勧奨については、脱退工作を受けた本人や工作を行った者の録音テープがあり、また、組合委員長に対する誹謗中傷の攻撃に会社側が関与していることも録音テープから明らかであるにもかかわらず、今回の決定はこれらの明白な証拠を何も検討していない。さらに、会社側の脱退勧奨を受けて組合を脱退したり、会社の働きかけで訴えを取り下げた第三者の陳述書についても、その信用性について一切言及することなく疎明がないと判断したことや、労働側の証人申請にもかかわらず、会社代表者を証人として採用しないでおきながら、代表者自身が関わった行為について労働組合側の主張を退けるなど、最低限の法的理解もなく、およそ公正な立場で判断されたものと思われない決定である。
第一交通労働組合は、第一交通産業グループ傘下において蔓延している労基法無視、労働者の権利を否定することに抗議して結成された。それを敵視した第一交通グループが考えられる限りの労働組合攻撃を繰り返し、会社側が把握している全ての組合員を解雇、更新拒絶、休職期間満了などあらゆる口実で社外に放逐したのが第一交通事件である。このような事実の経過を見るだけで普通の社会常識があれば、会社による労働組合嫌悪とそのための嫌がらせによる不当労働行為があったと判断できる筈である。今回の愛労委による全部棄却の命令は、愛労委が不当労働行為救済機関としての資格がないことを露呈したものである。この不当で非常識な命令に対し、直ちに中労委に再審査を申し立てると同時に、愛労委を不当労働行為救済機関としてふさわしいものにするため、労働委員会を民主化するための闘争を行うことを宣言する。
2018年11月8日
第一交通労働組合
第一交通事件弁護団
第一交通をまともな会社にする会