2018年4月17日
愛知県警察本部長 殿
抗議申入書
愛知県労働組合総連合
コミュニティユニオン東海ネットワーク
愛知働くもののいのちと健康を守るセンター
自由法曹団愛知支部
東海労働弁護団
(取扱)
〒462-0819 名古屋市北区平安2丁目1番10号
第5水光ビル3階
弁護士法人 名古屋北法律事務所
1 抗議の趣旨
2018年3月26日に名古屋駅西口で実施した街頭宣伝活動に対し、愛知県警の警察官が同日18時30分頃、街頭宣伝参加者に対して厳重注意を行ったことに対して抗議する。
2 抗議の理由
(1)我々は、東海地方で労働者の権利の増進のために安倍政権が推し進めようとしている労働法制の改悪反対の為に行動をする労働法制改悪反対実行委員会(以下「実行委」とします)の所属団体です。
実行委は、2018年3月26日、名古屋駅西口のビックカメラ前で、所属メンバー数人で、日本労働弁護団が作成した「働き方改革」解説リーフレットをポケットティッシュと一緒に配布する宣伝行動を行いました。
同日午後6時半頃、愛知県警中村警察署の西口交番所属と思われる警察官らが、「何のビラを配布しているのか。」「道路使用許可をとっているのか。」「配布物を見せてくれ」「代表者の名前は?」と、ビラを配っていたメンバーに聞いてきました。
そのため、配布者のうちの1人が、弁護士であると名乗ったうえで、「労働法制改悪反対のビラを配っている。」「道路使用許可は不要である。この点は判例上もあきらかである。」と述べたところ、一旦は引き下がったものの、約5分後に再び、当該弁護士を3名の警察官が取り囲み、再度「道路使用許可はとっているのか。」「弁護士の登録番号を教えろ。」と言ってきました。
当該弁護士及び、他のビラ配布者が、何度も「ビラ配布に道路の使用許可は不要である。」と言って有楽町ビラまき事件の説明をしましたが、取り囲んだ警察官は、「そういう解釈のことは、管轄の上の人に聞いてほしい。」と言って、その点についての話を棚上げにする一方、「今日は厳重注意だけで帰る。」と言ったため、当該弁護士が、「注意されるようなことは一切していない。何の根拠で厳重注意するのか。」と聞いたところ、その警察官は、「警察法第2条が根拠である。」と答えたため、「私たちが、いつ刑罰法規に触れるようなことをしたというのか。」と質問したところ、警察官は「道路を占拠している。」と答えました。その為、ビラ配布者の側で、「ビラ配布者は、誰も通行の妨害はしていない。通行者の通行の邪魔にならないように配慮してやっている。厳重注意を撤回せよ。」と述べたところ、当該警察官は、「確かに現時点では、通行の妨害はしていない。犯罪のおそれもない。しかし、近い将来において、通行の妨害等の犯罪を行う可能性がある。犯罪の予防が警察官の役目だから、厳重注意するのだ。」と言って、最後まで撤回しませんでした。
(2)そもそも街頭でのビラ配布や宣伝は、憲法21条で保障された表現の自由に含まれるものであり、許可を必要としません。
道路交通法77条1項4号において許可が必要とされる道路使用とは、「一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為」を言います。
単なるビラまきや宣伝が「一般交通に著しい影響を及ぼす」事はあり得ない以上、実行委が行ったビラ配布や宣伝が警察署長の許可を必要とする道路使用には該当しません。
この点に関しては、東京都・有楽町の駅頭におけるビラまき事件の無罪判決(東京高裁1966年2月28日判決)では「ビラまきは一般交通に著しい影響を及ぼす行為」ではないので「警察署長の許可を要する行為に該当しない」と明確に述べています。
千葉県・東金市での成人式会場前の署名活動を不当逮捕したことに対して国家賠償訴訟を起こした裁判の判決(千葉地裁1991年1月28日判決)は、県の公安委員会が定めた施行細則にも該当しないとして、県(県警)に賠償金の支払いを求めています。
このように、ビラ配布に道路使用許可は不要であることは裁判上確定していることであり、交番の警察官といえども、それを知らないことは許されません。
しかも、「近い将来、通行の妨害等の犯罪を行う可能性がある」というのは、何らの合理性もない決めつけであることは明らかであり、警察法2条の要件を満たさない違法なものです。
(3)我々は、3名の警察官に取り囲まれ、ビラ配布は約10分間中断を余儀なくされました。警察官らの行為は、明らかにビラ配布の妨害行為です。これは憲法に保障された表現の自由を、警察官が侵害するものであり、許されることではありません。
我々は、警察官の本件違法行為について、抗議を申し入れるとともに、愛知県警察本部として、今後このようなことがないように、警察官の教育指導を徹底されるよう厳に申し入れるものです。
以上