愛知県最低賃金の改定に関する異議の申出書

2013年9月11日

愛知労働局長 新宅 友穂 様

愛知県労働組合総連合
議 長  榑松 佐一

愛知労働局一般公示第76号「愛知県最低賃金の改正決定に係わる愛知地方最低賃金審議会の意見に関する公示」が8月28日にありましたので、愛知県労働組合総連合は、以下のとおり異議の申し出をおこないます。

 8月28日、愛知地方最低賃金審議会は愛知県の地域最低賃金の時間額を、これまでの758円に中央最低賃金審議会が示した目安「19円」に3円を上積みして780円とするとの答申をおこなった。今回の答申は、一定部分の評価はあるものの、憲法25条で保障される「健康で文化的な最低限度の生活」を営むに値する金額とは到底言えない。今回の答申を破棄し、少なくとも800円を上まわる引き上げ、1000円以上への引き上げの見通しを明らかにすることを求めるものである。

理由

・働く者の生活実態および“最賃生活”の検証がなされた上での「答申」ではないこと

(1)   愛知地方最低賃金審議会(以下「愛知審議会」という)の今年の答申は、「中賃目安」をよりどころにしておこなった答申である。中賃のAランク「19円」という目安は3年ぶりの2ケタ引き上げとなるが、これに対しての上積み額は、私たちが求める“大幅な引き上げ”にはおよばなかった。政府は早くから最賃の引き上げを明示し、田村厚労相は目安答申に関わって「地賃の審議を重大な関心を持って見守る」と述べている。こうしたこともあり、愛知審議会での議論が期待されたが、わずか3円の上積みとなった。

(2)上記の結果は、これまで私たちがとりくんできた「最低賃金生活体験」における体験者の感想が示す「とても暮らせない」との声が反映されたものとは思えない。仮に時間給800円であっても1日8時間、月22日働いて月額14万円程度、年収は170万円弱にしかならない。実際に758円で1ヵ月間「最低賃金生活体験」をおこなった46人は、「病気になっても病院に行かない」、「外との交流を絶つ賃金水準は精神上も大きな障害」、「何のために生活しているのか、人としての楽しみがまったくない」と厳しい状況を語っている。審議会で議論をする上で、形式はどうあれ、何らかの検証がなされないままの結論では、働くものの生活を考えているとは言えない。この間、「事業主の支払い能力論」が議論の柱に据えられてきたが、同様に「最賃額の生活実態」も議論に加えるべきである。そうした上でも当事者の声を聞くことは有効であり、全国22地方に広がっている「意見陳述」の実施を早急にもうけるべきである。

(3)今回22円の引き上げになったとはいえ、このようなペースでは、私たちが要求している1000円以上に到達するにはかなりの時間がかかる。3年前に閣議決定された「早期に全国最低800円、20年までに全国平均1000円」の実現も厳しいと言える。政府の「成長戦略」は「日本経済の再興」を強調しているが、そのためには労働者の賃金上昇、中小企業の経営安定は欠かせない。1兆円以上の利益をあげている大企業は、労働者の賃上げをおこなっていない。利益は内部留保と株主の配当にまわるだけだ。これでは経済の“再興”はできない。今回、使用者側委員は採決において「反対」したが、本気で日本経済を再生する気があるのか疑わしい。「使用者」たる企業が国民経済再生という観点から、利益の一部を還元するとともに、「支払い能力論」に固執せず、思い切った最低賃金の引き上げをすすめていくことを切に願うものである。

(4)以上をふまえ、愛労連は、あらためて審議会における「意見陳述」や「専門部会の傍聴」など、開かれた議論をおこなうよう、現在の運営のあり方の抜本的な改善を求めるものである。

以上

 

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