2012年衆議院選挙にあたって 公正で自由な選挙の実現を求める要請書(愛知県選挙管理委員会あて)

2012年11月29日

愛知県選挙管理委員会 御中

選挙の自由を求める愛知共同センター
構成団体
愛知県労働組合総連合
愛知県商工団体連合会
 新日本婦人の会愛知県本部
 自由法曹団愛知支部
 日本国民救援会愛知県本部
〔連絡先〕名古屋市中区大須4-14-57 山岸ビル46
 日本国民救援会愛知県本部℡052-251-2625

悪政をすすめてきた野田内閣は国民からの厳しい批判を受けて、11月16日、衆議院を解散しました。それに伴い、12月4日公示、16日投票で衆議院選挙(総選挙)がおこなわれることになりました。 今回の選挙は、民主党政権のもとで初めての総選挙であり、大震災からの復興、原発問題、 TPP問題、消費税増税問題、米軍普天間基地移設・オスプレイ配備問題など、日本の針路、国民の暮らしにとって大変重要な選挙となります。

そのような重要な総選挙が、公正で自由におこなわれることを求めて、貴会に要請するも のです。

日本国憲法第15条第1項は、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利」と規定し、公職選挙法第1条は「この法律は、……選挙が選挙人の自由に表明せる意思によって公明且つ適正に行われることを確保し、もって民主政治の健全な発達を期する」と明記しています。また、市民的及び政治的権利に関する国際規約(国際人権B規約)は、「規約25条(参政権)により保障されている権利の完全な享受を確保するためには、……規約19条(意見及び表現の自由)、21条(集会の自由)、22条(結社の自由)に保障されている権利を完全に享受し、尊重することを要求する。」(一般的意見25・para25)としています。2008年の国連自由権規約委員会は、日本審査の総括所見で、「公職選挙法の下での戸別訪問の禁止、選挙運動期間前に配布可能な文書図画への制限などの表現の自由及び参政権に対して課された非合理的な制約につき懸念を有する」とし、「政治活動及び他の活動を、警察、検察官及び裁判所が過度に制約しないように、表現の自由と参政権に対して課されたいかなる非合理的な法律上の制約をも廃止すべきである」と選挙・政治活動への規制を厳しく批判し、その改善を求めています。

以上のように、選挙のときこそ、憲法や国際人権規約が保障する言論・表現の自由を最大限に尊重して、主権者国民が、その権利を行使するにあたって十分な判断材料が提供され、活発な言論・政策戦がおこなわれるなど、自由で公正な選挙・政治活動が保障されなければなりません。

ところが、政治活動・選挙の公正を著しく踏みにじる弾圧・妨害事件が起きています。貴会におかれましては、下記の事項について適切に対処されるよう要請します。

一、警察による違法な捜査・尾行・張り込みなどの干渉を許さないこと

これまでの選挙において、警察は、「選挙違反の取締り」を口実に、革新政党や民主団体・労働組合などの活動を妨害・干渉し、国民の言論・表現活動に対する不当な規制をおこなってきました。

「不偏不党、公平中正」(警察法)を旨とする警察が、その規定を遵守し、主権者国民の 正当な政治活動、選挙運動の自由と権利を侵害することのないよう、適切な働きかけをおこなうことを強く求めます。

二、マンションなど集合住宅へのビラ配布の保障を

都市部ではマンションなどの集合住宅の住民が多数となる地域が増大しています。

選挙期間において、法定ビラや政策ビラ、新聞号外などの配布は、正当な選挙・政治活動であり、有権者の知る権利・選択の自由を保障する行為であって、住居侵入罪や軽犯罪法違反とは全く無縁のものです。直接の全戸配布は全所帯に重要な情報をつたえるための大切な 手段です。こうした行動を干渉したり、取り締まったりすること自体、「職権濫用による選挙の自由妨害罪」(公選法226条)にあたる違法行為です。このような事件が発生しないよう、貴会が適切に対処されることを求めます。

また、マンションや集合住宅において、管理人が、集合ポストへの法定ビラ等の配布に対して、「配布は禁止している」「警察を呼ぶ」等の干渉を加える事案が多数発生しています。 しかし、東京では、選挙公報の新聞折込をやめて、各戸配布に変えた自治体が増えるなど、ビラ配布は重要な伝達手段となっています。なお、東京・葛飾ビラ配布弾圧事件で最高裁は2009年11月の判決で、「7階から3階までの廊下等」に立ち入った事例であることを明確にしており、ビラの配布を目的とする立ち入り行為を一律違法と判断していません。

選挙管理委員会としても、住民や自治会に対して積極的に連絡や説明の文書を出すなど、マンションの管理者等が、郵便ポストへの正当なビラ配布行為などを禁止・規制することのないよう、指導するよう強く要請します。

三、謀略ビラや暴力による選挙・政治活動への妨害を許さないこと

選挙において、特定の政党や候補者・団体を誹謗・中傷する出所不明の謀略ビラ(怪文書) の配布や、法定ビラの配布などの宣伝活動に対する妨害、宣伝カーの損壊などの妨害行為は、国民の知る権利を侵すとともに、公職選挙法の「虚偽事項の公表罪」(235条)、「選挙の自由妨害罪」(225条)、さらには刑法に該当する犯罪行為です。悪質な選挙妨害等を厳正に取り締まるよう求めます。

四、「ぐるみ選挙」の違法性の周知徹底を

これまでも、企業や団体などにより、従業員を動員して支持拡大を割り当てたり、投票させたりする「ぐるみ選挙」がおこなわれてきました。このような「企業・団体ぐるみ選挙」は、憲法が定めた「投票の自由」、個人の「思想・信条の自由」を侵害する行為であり、自由で公正な選挙を蹂躙するものです。

最高裁は1996年、牛島税理士訴訟で、団体が政治献金を強要したり干渉したりすることは「投票の自由」を侵すことであり、個人の思想・信条の自由を保障した憲法のもとで許されないと判断しました。

「企業・団体ぐるみ選挙」をおこなわせないために、その違法性を周知徹底し、厳しい監視と適切な指導をおこなうよう求めます。

 以上

 

最高裁判所裁判官国民審査に関する要請

今回の総選挙と同時に、第22回最高裁判所裁判官国民審査(以下:国民審査)が行われます。

この間、私たちは、国民審査が、日本国憲法第79条2~4項が規定する主権者国民による最高裁判所裁判官の審査制度にふさわしく行われるよう、改善の要望を各級の選挙管理委員会にたいして重ねてきました。国民審査に関する実務について改善の通達が出されるなど、一定の改善の努力がなされてきました。 今回の国民審査は、裁判員制度が施行されてから初めて行われるものであり、また、審査対象となる裁判官が10人にも上るという点からも、いっそうの改善が必要です。

国民審査にあたって、以下要請します。

  1. 投票所において、審査の方法を周知徹底させること。
  2. 棄権票の取扱いに適切な措置を講じるため、審査用紙を戻す箱(棄権箱)を設置すること。
  3. 係員、立会人において、審査人の審査用紙不受領、返却などに際して、投票の強制にわたる言動のないように指示・指導すること。

以上

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