8月6日、愛知地方最低賃金審議会は、愛知県の最低賃金についてわずか8円の引き上げで758円とする答申をおこなった。この金額では1日8時間、月22日間働いても月額13万3408円であり、年間でも160万円程度にしかならない。ここから税金・社会保険料などを差し引けば手取りは月12万円そこそこにしかならない。全国でもAランクに位置付けられている愛知の最低賃金がこの水準に押さえられていることは「最低賃金の全国平均を20年までに時給千円に引き上げる」「時給800円の全国最低賃金は、できる限り早期に実現する」とした雇用戦略対話での政労使合意に全く反するものである。
私たちは今年2月、1ヵ月間を時間給750円、月額13万2千円で実際に生活する「最低賃金生活体験」にとりくんだ。体験者は一様に「食べて寝るだけの生活」「将来に希望をもてない」とのべており、「病気になっても病院にいけない」と命の危険さえ危ぶまれる状況を語っている。また愛労連では一昨年、最低生計費調査を行い、青年が自立した生活を行うためには最低でも月額22万3千円(年額約267万円)が必要だという試算がでている。政労使合意の最低賃金時給千円はまさに最低限の金額である。
今年の審議にあたって私達はこの厳しい体験をおこなった若者や、時間給で生活する非正規労働者の生の声を審議会へ反映させるため「意見陳述」を要望したが、連合愛知推薦の労働者委員の反対により却下された。また実質的な審議が行われる専門部会は毎年非公開とされており委員選出組合でなければその内容を知ることができない。特定利害関係者だけによる密室審議は情報公開法の趣旨に反するものである。
今日若者の二人に一人が非正規雇用となり「若者の貧困」が大きな社会問題となっている。その根底に最低賃金の低さがある。これまでは親の扶養などにより生活を維持してきたが、団塊の世代が定年を迎え、来年からは厚生年金の給付年齢が次第に引き上げられ無収入になれば「世帯丸ごと貧困」の事態も生まれかねない。愛知の審議会がこのような問題をどの程度議論したのか全くわからない。
私達は昨年も中小企業労働者や非正規労働者の代表を含めた労働者委員の公正任命を求めて「不服申請」を行ったが、当局は連合愛知独占を変えようとしてこなかった。23年にわたりこのような不誠実な運営、時代遅れの密室審議を続ける愛知地方最低賃金審議会のあり方に愛労連は断固抗議し、これを社会に訴えるものである。
2012年8月6日
愛知県労働組合総連合
議長 榑松 佐一
※上記の声明と同じ内容で、愛知県最低賃金審議会の皆川正会長に抗議文を提出しています。