2012年 愛知県の地域最低賃金改定に関する意見

2012年7月20日

愛知労働局長  新宅 友穂 様
愛知地方最低賃金審議会 会長 皆川 正 様

 

愛知県労働組合総連合
議長  榑松 佐一

愛知の最低賃金改定にむけて日々ご尽力されていることに敬意を表します。

さて、いよいよ中央最低賃金審議会(以下「中賃」)で、2012年の最低賃金の改定にむけた議論がはじまりました。今年度、「中賃」がどのような目安をだすか大変注目されるところです。 

昨年は東日本大震災と原発事故が及ぼした経済への影響から「特段の配慮」が求められました。しかし、そのことが被災地の早期復興・生活再建において後押しにはならず、現に「最低賃金の改善は経済復興と車の両輪」と訴える経営者の声が被災県から聞かれます。こうした実態等をふまえ、私たちは、以下の理由から2012年の最低賃金引き上げを強く求めるものです。

 

1.東日本大震災を口実にした最低賃金引き上げ抑制は復興・再建には逆効果ではないか

(1)昨年の「中賃」目安等への不満の声

6月26日、中央最低賃金審議会が開催され、今年の最賃改定審議がスタートしました。

昨年は震災・原発事故の影響を理由とした「特段の配慮」により目安答申はAランク4円、BCD各ランク1円と、被災県はのきなみ1円という抑制された結果が出されました。全労連が今年5月におこなった東北地方の最賃キャラバン行動では、被災地を含む東北6県の労働局・自治体・経営者協会を訪問し、要請や懇談をしていますが、この低額目安に対し批判的でした。中には「今年こそはしっかり引き上げていきたい…個別企業のコスト論ではなく、地域経済全体の視点でモノを考えてもらえるよう、資料提示したい」との決意表明や「労働者のモチベーションを上げるためにも、働きがいのある職場づくりのためにも最賃改善は必要だ」などの声がありました。

こうした発言の背景には、ガレキ処理事業や助成金をつけた雇用対策事業に、多くの県外企業が群がり、利益を吸い上げ、末端の事業者や労働者には最賃レベルの賃金しか払われていない実態があるからです。これ以上の「特段の配慮」は被災地の復興・再建にさらなるブレーキをかけるのではないかとの懸念を抱かざるを得ません。

 

(2)賃上げ・雇用拡大こそ経済の活性化、復興の早道

東日本大震災というかつてない課題に直面し、その復興に国民が全力をあげているところです。そのためには、最低賃金引き上げの抑制ではなく、労働者がまともな生活ができる賃金と雇用の拡大をはかること、さらには労働者を支える中小企業支援を同時におこなうことで経済を活性化させることが必要であり、そのことが復興を早めることにつながるという立場から、積極的な最低賃金の引き上げを求めるものです。

 

2.現行最低賃金は「生計費」を考慮すべきである

(1)現行最低賃金は「課税最低限103万円」の「家計補助」水準をベースにしている

現在、最低賃金の全国平均は737円です。国際的にみても低い水準にある日本の最低賃金の「基準」が、所得税における課税最低限103万円、あるいは被扶養家族の130万円が前提になっていることは明らかです。年間総労働時間を2000時間とし、その4分の3の1500時間で課税最低限の103万円を割ると687円、被扶養者の130万円を同時間で割っても866円です。最低賃金が「生計費」ではなく、「家計補助的」な水準におかれていることは明白です。だからこそ、生活保護水準との逆転などという現象がおきるのです。

 

(2)愛知県で働く青年の最低生計費は「時間額1285円」以上必要であり、家計簿調査でも裏付けられた

愛労連は一昨年、「人前に出ても恥ずかしくない生活」をするにはいったいどのくらいの費用がかかるのかという「最低生計費調査」にとりくみました。この調査では生活実態とともに、調査対象者の7割の人がもっている「手持ち材」をピックアップし、その価格調査をおこないました。その試算結果では、25歳の名古屋市内在住・男子単身者で、時間額1,285円(月額223,230円/年額2,678,760円)でした(※いずれも税込み額)。

この試算をふまえ、今年の2月に家計簿チェックを1ヵ月間おこなったところ、20~40代単身者の平均金額は、消費支出が1ヵ月190,163円(生計費額:184,184円)であり、支出に照らした時間額は1,474円でした。この結果、私たちが導き出した最低生計費(時間額1,285円)は普通に生活する上で必要な金額として高い額ではなく、最低ラインであることも裏付けられました。

 

3.審議会での意見陳述、専門部会における傍聴の実現を

(1)署名のとりくみ、街頭でのハンガーストライキなど

愛労連では毎年2月の「最賃生活体験」や「最賃引き上げをめざすハンガーストライキ」(6月15日に実施)等をおこなっています。こうしたとりくみを通じ、体験者の声をまとめたり、非正規ではたらく仲間の声を積極的にすくい上げています。今年は署名の反応が大変良く、街頭での対話もすすみました。「最賃」という言葉も広がってきており、「最賃引き上げ」の要望は年々高まっているのを感じます。

審議会の審議において、真に対象となる人たちの実態を把握するうえで「意見陳述」は欠かせません。非正規労働者や時給労働者がどの程度の賃金水準なのか、どのような生活をしているのかをぜひ把握していただきたい、そのためにぜひ、意見陳述を実施していただくよう要請します。意見陳述は現在、全国10都市以上に広がっており、労働者を中心にすえた審議がおこなわれていることが各地から報告されています。愛知での開催も早急にお願いするものです。

また、本審以外の専門部会等では傍聴すら認められていません。その理由は「本音の議論ができなくなる」というものですが、これでは専門部会等で何が議論されているのかわからなくなります。審議会はすべて、基本的に公開すべきです。

 

以上、2012年の審議会の開催にあたり、意見を提出します。

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