秘密保全法制に反対する決議

政府は昨年、「秘密保全のための法制の在り方に関する政府の有識者会議」の報告を受け、秘密保全法案を国会に提出する準備を始めた。この有識者会議の報告書は、「国の安全」、「外交」、「公共の安全及び秩序の維持」の3分野を対象に「特別秘密」を指定し、秘密の漏えいを広く処罰することや、「人的管理」の名の下にプライバシーにかかわる広範な事項の調査権限を政府に 認めることを提言している。

しかし、このような秘密保全法制は、国民の知る権利やプライバシー権を侵害し、ひいては近代立憲主義を骨抜きにするものであり、日本国憲法の下では到底、許されないものである。ひとたび秘密保全法が成立してしまえば、主権者である国民が保有すべき情報は、「特別秘密」の名の下に次々とブラックボックスに放り込まれ、国民が政府を有効に監視することは不可能となる。政府を監視する厳しい国民の目が、憲法を敵視し、軍事的協力へと前のめりになる政府の行為に歯止めをかけてきた。各種情報開示訴訟やイラク派兵差止訴訟に見られるように、政府の行きすぎに対して、市民は憲法の立場から違憲・違法な行為をチェックしてきた。このような監視の目がなくなってしまえば、政府が暴走することは容易に予想されるところである。政府が、政府の方針に反対する市民を敵視し、監視を行い、違法に市民の情報を収集してきたことは、情報保全隊訴訟判決で仙台地裁が断罪したところである。我々は、政府の情報を秘匿し、市民を監視する国家を作ることを許してはならない。

そもそも、国民主権原理や民主主義の下においては、何を「国民の利益」とするかを判断するのは国民自身である。国民が正しく決断できるよう、国は国民に対して説明する義務を負っており、国が保有する情報は適切な時期に正しく開示されなければならない。しかし、秘密保全法が制定されれば、国が国民の知る権利を無視し、国にとって都合の悪い情報を恣意的に秘匿する危険がある。「特別秘密」を指定するのは情報を保有する行政機関自身である。その結果、行政機関の都合の良い情報のみが公開され行政機関が公開したくない情報も公開させる、という本来の情報公開法制度の趣旨は踏みにじられ、情報公開制度は実質的に否定されることとなる。有識者会議の報告書は、このような秘密を、最長10年の懲役という重罰に加え、過失の漏洩行為、共謀行為、独立教唆行為、煽動行為、及び特定取得行為といった極めて広範囲かつ不明確な行為を処罰対象としている。罰則がもたらす萎縮効果により、従来行われてきた取材活動や情報公開に向けた運動等が過度に制約されることは明らかである。さらに、適性評価制度に基づく人的管理は、公務員だけでなく民間人にまで及ぶ対象者やその周囲の人々のプライバシー権を侵害する。国家権力による市民の監視を合法化させることにつながるものである。

幸いにも、政府は秘密保全法制の今国会への提出を断念した。しかし、次期国会への提出を目指すと表明している。本日、私たちは、「秘密保全法に反対する愛知の会」を結成した。当会は、日本国憲法の保障する民主主義、人権を著しく侵害する秘密保全法制の制定を断念するよう要求し、広く国民に危険性を訴え、政府が秘密保全法制の制定を断念するまで、運動を継続することを決議する。

 以上

 2012年4月2日

「秘密保全法に反対する愛知の会」結成総会 参加者一同

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