名古屋の河村市長は2月20日、姉妹都市提携を結ぶ中国・南京市の訪問団との懇談の席上で「南京事件というのはなかったんじゃないか」と南京大虐殺を否定する発言を行った。これに対し中国政府は抗議を行い両市間の一時交流停止を決めたが、河村市長は22日にも日本記者クラブでの記者会見で「いわゆる大虐殺はなかったのではないか」との姿勢を示した(中日2/23)。
南京大虐殺については30万人という人数についての議論はあるが、日本政府も「多くの非戦闘員の殺害や略奪行為等があったことは否定できない」(外務省ホームページ)と述べている。虐殺については当時の日本政府・軍の当局者の証言でも「上海から来信、南京に於ける我軍の暴状を詳報し来る。略奪、強姦、目もあてられぬ惨状とある。嗚呼これが皇軍か」(石射猪太郎元外務省東亜局長の日記、38年1月6日)と証拠が明らかになっている。
河村市長は市長になる以前から南京大虐殺を否定する持論を展開してきた。しかし河村市長が根拠としているのは南京市で従軍していた父親が敗戦後「南京の寺で部隊が駐屯させていただき、温かいもてなしを受けた。例えばラーメンの作り方を教えてもらったり、農家から野菜をいただいた」というだけである。
捕虜の虐待は国際法で禁止されている。食料の提供を受けたことだけで虐殺を否定できないのは当然である。市民を代表する市長が「私的」な体験だけを根拠に歴史的に確認されてきた事実を否定する発言を行う事は厳に戒めるべきである。
河村市長はこれ以外にも戦争資料を展示するNPO法人に対しても「南京大虐殺の展示をしている」ことを理由にして固定資産税の減免を拒否している。これも公的な立場を逸脱した行為である。
日中国交正常化40周年のこの年、名古屋市民と南京市民の友好と交流が期待されるなかでの市民を代表する市長の発言は言語道断で有り、直ちに撤回を求めるものである。
2012年2月24日
愛知県労働組合総連合
議 長 榑松 佐一