2011年10月25日~28日
各市町村長 様
各市町村議会議長 様
(愛知県下全自治体)
愛知自治体キャラバン実行委員会
代表者 徳田 秋
名古屋市熱田区沢下町9-7
労働会館東館3階301号
【趣旨】
医療、福祉、介護、年金など社会保障の改悪や派遣切り・リストラなどにより、国民のいのちと暮らしが脅かされています。その結果、生活不安・破綻、家族崩壊などが増加し、自殺、介護殺人、子どもの虐待など悲惨な状況が後を絶ちません。
「姥捨て山制度」といわれた後期高齢者医療制度も廃止が先送りされ、検討されている新制度案は、国保の「都道府県単位化」とセットになっているだけでなく、「負担増か医療抑制か」の二者択一を迫り、高齢者を差別する後期高齢者医療制度の根幹をそのまま引き継いでいます。
施設になかなか入所できず、介護サービスの利用制限など問題山積みの介護保険制度も、来年4月からの「第5期介護保険事業計画」にむけての検討もはじまり、「地域包括ケア」の名で在宅サービスの重視を掲げながら、生活支援のサービスは保険給付外とするなど給付制限をすすめようとしています。
今回の東日本大震災は、自治体が住民のいのちと健康、くらしを守る砦としての役割をはたしていくことの重要性を一層明らかにしました。各市町村が医療や福祉の切り捨てや民間委託など自治体リストラをすすめることなく、以下の事項について改善をお願いします。
【陳情事項】
【1】自治体の基本的あり方について
- 憲法第25条、地方自治法第1条をふまえて医療・介護・福祉など社会保障施策の充実をすすめてください。
- 税滞納世帯等への行政サービス制限は行わないでください。
- 徴税を強める愛知県地方税滞納整理機構については、徴税は自治体の業務であることをふまえて、滞納整理機構に税の徴収事務を移管しないでください。参加していない市町村は今後とも参加しないでください。税滞納世帯の解決は、住民の実情をよくつかみ、相談にのるとともに、地方税法第15条(納税緩和措置)の適用をはじめ、分納・減免などで対応してください。
【2】地震被害などに対応できる福祉・防災のまちづくりについて
- 職員を適正に配置し、いつでも必要な住民サービスが提供できる自治体にしてください。
- 防災計画を、マグニチュード9を想定して見直し、市町村独自の対策を講じてください。
- 小中学校などの耐震化の促進、食料・水などの備蓄の強化、防災拠点の耐震化をはかってください。個人宅の耐震化についても促進をはかる施策を充実してください。
- 避難所のバリアフリー化をすすめてください。
- 集団での避難生活が困難な高齢者・障がい者(児)、特別な介護を含む援助が必要な高齢者・障がい者(児)のための福祉避難所を整備・拡充してください。
- 災害拠点病院の強化拡充をはかってください。
- 防災マップの見直し、避難経路の確保等を進めてください。
- 防災教育を徹底してください。
【3】以下の事項を実現し、市町村の福祉施策を充実してください。
1.安心できる介護保障について
(1)介護保険について
- 介護保険料を引き下げてください。また、負担能力に応じたきめ細かい保険料負担段階を設置してください。
- 低所得者に対する介護保険料の減免制度を実施・拡充してください。とくに、住民税非課税、介護保険料普通徴収の高齢者、無年金者への配慮をつよめてください。
- 低所得者に対する利用料の減免制度を実施・拡充してください。
- 要支援者を介護保険からはずす「介護予防・日常生活支援総合事業」は実施せず、介護保険による介護予防サービス及び地域支援事業を充実してください。
- 特別養護老人ホームや小規模多機能施設など施設・在宅サービスの基盤整備を早急におこなってください。基盤設備が円滑に進み、低所得者・医療依存度の高い利用者の入所が確保できるよう助成制度を設けてください。
- 地域包括支援センターを中学校区毎に設置し、最低1カ所は市町村直営としてください。また委託されたセンターの職員が責任をもって働き続けられるよう委託費を引き上げてください。
- 介護労働者を確保するために、適正な賃金・労働条件および研修について、財政的な支援をしてください。
(2)高齢者福祉施策の充実について
- 高齢者が地域でいきいきと生活するために、以下の施策を一般会計で実施してください。
- ひとり暮らし、高齢夫婦などへの安否確認や買い物など多様な生活支援の施策を充実してください。
- 高齢者や障がい者などの外出支援のため地域巡回バスや福祉バスなどの施策を充実してください。
- 宅老所、街角サロンなどの高齢者の集まりの場への助成金制度を拡充し、高齢者がねたきりにならないよう多面的な福祉施策を実施してください。
- 高齢期になっても住み続けることができるバリアフリーの高齢者住宅を公営で整備してください。
- 配食サービスは、最低毎日1回は実施し、助成額を増やし自己負担額を引き下げてください。また、閉じこもりを予防するため会食(ふれあい)方式も含め実施してください。
(3)障がい者控除の認定について
- 介護保険のすべての要介護認定者を障がい者控除の対象としてください。
- すべての要介護認定者に「障害者控除対象者認定書」または「障害者控除対象者認定申請書」を個別に送付してください。
2.高齢者医療などの充実について
- 後期高齢者医療対象者のうち住民税非課税世帯の医療費負担を無料にしてください。福祉給付金(後期高齢者福祉医療費給付)制度の対象を拡大してください。
- 後期高齢者医療制度の保険料滞納者に対する保険証の取り上げ・資格証明書の発行をしないでください。また、短期保険証は、発行しないでください。
3.子育て支援について
- 18歳年度末まで医療費無料制度を現物給付(窓口無料)で実施してください。また、自己負担を設けている自治体はなくしてください。
- 妊産婦健診は、初回の健診も含め、産前14回、産後1回を無料で受けられるように助成してください。
- 就学援助制度の対象を生活保護基準額の少なくとも1.4倍以下の世帯までとしてください。申請の受付は、学校だけでなく市町村の窓口でも受け付けてください。また、申請手続きに民生委員の証明が必要な市町村はなくし、支給内容を拡充してください。
- 義務教育は無償の立場から学校の給食費は無料にしてください。
4.国保の改善について
- 国民健康保険制度の都道府県単位化に反対してください。
- 保険料(税)について
- これまで以上に一般会計からの繰り入れをおこない、保険料(税)の引き上げを行わず、減免制度を拡充し、払える保険料(税)に引き下げてください。
- 18歳未満の子どもについては、均等割の対象としないでください。当面、一般会計による減免を実施してください。
- 前年所得が生活保護基準額の1.4倍以下の世帯に対する減免制度を設けてください。
- 所得激減による減免要件は、「前年所得が1,000万円以下で当年の見込所得が500万円以下、かつ前年所得の10分の9以下」にしてください。
- 保険料(税)滞納者への対応について
- 資格証明書の発行をやめてください。とりわけ、18歳年度末までの子どものいる世帯、母子家庭や障がい者のいる世帯、病弱者のいる世帯には、絶対に発行しないでください。なお、義務教育修了前の子どもについては、窓口交付だけでなく、郵送も含め1枚も残すことなく保険証を届けてください。
- 滞納者に対し給付の制限をしないでください。
- 保険料(税)を支払う意思があって分納している世帯には正規の保険証を交付してください。
- 保険料(税)を払いきれない加入者の生活実態の把握に努め、加入者の生活実態を無視した保険料(税)の徴収や差押えなど制裁行政をしないでください。また、無保険者の調査を実施してください。
- 一部負担金の減免制度については、生活保護基準額の1.4倍以下の世帯に対しても実施してください。また、一部負担金の減免制度を行政や医療機関の窓口にわかりやすい案内ポスター、チラシを置くなど住民に制度を周知してください。
5.障がい者(児)施策の充実について
- 障がい者(児)の医療・福祉サービスの自己負担、利用料、給食費・食費・光熱水費などの実費負担を市町村独自に減免してください。
- 自立支援医療を利用する住民税非課税世帯の利用料を無料にしてください。
- 障がい児入所・通園施設利用料、居宅介護・行動援助など福祉サービス利用料、補装具を無料にしてください。
- 市町村が行う地域生活支援事業を無料にしてください。特に、移動支援・福祉ホーム利用料を無料にしてください。
- 施設利用者の食費・光熱水費の自己負担をなくしてください。
- 実態に合わない障害者程度区分認定を基準としたサービス利用時間の支給制限を撤廃してください。移動支援等の地域生活支援事業に対する予算を増額し、移動支援は必要時間を支給してください。
- 第3期障害福祉計画の策定にあたって、数値目標・サービス見込み量の検討段階においても幅広く意見をもとめ、障害者本人・家族・事業者の意見を反映したものにしてください。また、ホームヘルパー増員、グループホーム・ケアホームの増設などをはかり、選択できる基盤整備をすすめるものとしてください。
- 国・県に準じて障害者政策委員会を設置してください。
- 障害者差別禁止条例を制定してください。
6.健診事業について
- 特定健診、がん検診、歯周疾患検診は、年1回無料で受けられるようにしてください。また、医療機関で行う個別方式・保健センターなどで行う集団方式をともに実施してください。
- 40歳未満の住民を対象にした健康診査を、年1回無料で受けられるようにしてください。
7.予防接種について
- ヒブ、小児用肺炎球菌、HPV(子宮頸がんワクチン)の任意予防接種を無料で受けられるようにしてください。
- 高齢者用肺炎球菌、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の任意予防接種に助成制度を設けてください。
8.生活保護について
- 憲法第25条および生活保護法に基づいて、他の制度を理由に生活保護申請を認めない、あるいは妨害することのないようにしてください。また、生活保護が必要な人には早急に支給してください。
- 自家用車の所有を理由に画一的に申請を認めない取り扱いを行わないでください。
- 就労支援や生活指導を個別にていねいにおこなうために、専門職を含む正規職員を増やしてください。
【4】国および愛知県・広域連合に、以下の趣旨の意見書・要望書を提出してください。
1.国に対する意見書・要望書
- 消えている年金問題を全面解決し、消費税を財源にすることなく、全額国庫負担による「最低保障年金制度」をつくってください。その際、すべての高齢者の無年金・低年金の改善に役立つものにしてください。受給資格年限を短縮し、安心してくらせる年金制度を確立してください。年金支給年齢の引き上げは行わないでください。また、旧社会保険庁職員の分限免職を撤回し、業務に精通した職員を活用し、国民の期待にこたえる年金業務体制としてください。
- 後期高齢者医療制度をすみやかに廃止し、元の老人保健制度にもどしてください。医療保険の患者負担を軽減してください。また、国民健康保険の都道府県単位化は行わず、国庫負担を増額してください。
- 介護保険への国庫負担を増やして、負担の軽減と給付の改善をすすめてください。安心して介護サービスが受けられるように介護報酬を改善してください。介護労働者の処遇を改善し、働き続けられるようにしてください。
- 18歳年度末までの医療費無料制度を創設してください。現物給付による子どもの医療費助成に対し国民健康保険の国庫負担金を減額しないでください。妊産婦健診の補助金を拡充し、恒久措置としてください。
- 消費税率の引き上げは行わないでください。
- 東日本大震災で明らかとなった公立病院・公的病院の役割が充分発揮されるよう、病院の統廃合・病床削減をやめて、ペナルティーなしの地域医療再生のための交付金を支出してください。また、地域医療充実につながるような診療報酬改定を行ってください。
- 障がい者(児)が生きるために必要な福祉・医療制度の利用料負担、実費負担を撤廃してください。また、早急に高齢障がい者等に対する介護保険制度を優先する仕組みを改め、障がい者本人の必要性に応じて障がい者施策と介護保険を選択できるようにしてください。
- ヒブ、小児用肺炎球菌、HPV、高齢者用肺炎球菌、水痘(みずぼうそう)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の任意予防接種を定期接種としてください。不活化ポリオワクチン導入を早急に行ってください。
2.愛知県に対する意見書・要望書
- 後期高齢者医療制度を選択しない65~74歳の障がい者にも、障害者医療費助成制度を適用してください。
- 後期高齢者医療対象者のうち、住民税非課税世帯の医療費負担を無料にしてください。福祉給付金(後期高齢者福祉医療費給付)制度の対象を拡大してください。
- 後期高齢者の健康診査事業に県として補助金を出してください。
- 子どもの医療費助成制度の対象を18歳年度末まで拡大してください。
- 国民健康保険への県の補助金を増額してください。
- 精神障がいにある人の医療費助成は、一般疾病も対象にしてください。
- 障がい福祉サービス・自立支援医療・補装具の利用料負担、施設での食費・水光熱費などの実費負担、市町村が行う地域生活支援事業の利用料負担を無くしてください。
- 厚労省通知「看護師等の『雇用の質』の向上のための取組について」に基づいて看護師等の勤務環境の改善を図るとともに、看護師の大幅増員を図ってください。
3.愛知県後期高齢者医療広域連合に対する意見書・要望書
- 愛知県に健康診査事業への補助を行うように要請してください。
- 低所得者に対する保険料および一部負担金の独自の減免制度を設けてください。
- 保険料滞納者への保険証取り上げ・資格証明書の発行は行わないでください。
- 後期高齢者医療制度に関する懇談会の委員に公募枠を設けるとともに、懇談会を公開してください。
以上
※この陳情に対する各自治体の回答などについては愛知社保協のホームページでご覧いただけます。